二上山に眠るオオツノミコの話(その1) シュライヒ オオカミ(14821)

今日、俺は死ななければならない。父が亡くなってから、まだ、1ヶ月も経っていないのに、俺は謀反の疑いを掛けられ、自害しなければならないのだ。親友の川島が裏切ったとの噂がある。真偽の程は分からない。確実なのは「今日死ぬ」ことだけだ。これは、もう、動かしようが無い。
(しくまれた罠…)そう感じている。悔しく無いと言えば嘘になるが、ここでじたばたするのは、男らしくない。せめて、最後は、潔く行きたいものだ。
俺自身は、至極真っ当に、衒いや驕りを捨て、人に対して、ただただ正直に接してきただけのことだ。
好かれようとも嫌われようとも考えず、学問を愛し、武芸を好み、自由気ままで、規則にこだわらず、謙虚な態度をとってきただけなのだ。それが逆に人望を集めたらしい。俺自身は全く意識していないのだが、月刊「日本書記」という雑誌では、今年の抱かれたい男ナンバー1になっていた。複雑な気持ちもするが、悪い気はしない。
黒幕が誰なのかは何となく分かっている。鵜野讃良のおばさん。たぶん、あのおばさんだろう。
おばさんが父の正妻なのは分かる。所詮、俺の母は側室だ。だけど、正妻だからって、なんでもしていいっていう道理は無いだろう。
おばさんは、どうやら、俺に対する世間の声が気になって仕方が無かったようだ。自分の息子、草壁の地位が脅かされるとでも思ったのだろうか。だけど、俺もそれほど馬鹿ではない。草壁を蹴落とすようなことをすれば、自分がどうなるかぐらい分かっている。ただ、父の死は、俺にとって想像以上に堪えた。動転した中、俺の取り乱した言動が相手に隙を与えたようだ。言葉尻りを捉えられ、俺は無実の罪を着せられた。
一番心配なのは、後に残される妻、山辺のことだ。彼女は俺のことを本当に愛してくれている。俺が死んだ後も生きていて欲しいが、それを望むのは酷な事かもしれない。
伊勢に住むたった一人の姉、大伯のことも気に掛かる。父の容態が徐々に悪化し始めた時、俺はいてもたってもいられなくなって、いけないとは思いながら姉のもとに向かった。次の日、都へ帰る時、俺の背に向って姉は悲しい和歌を読んだ。
「二人行けど行き過ぎがたき秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ」
(二人で行っても寂しい秋の山道をあなたはたった一人で帰ってゆくのか)

(続く)

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